平均ペースと今のペースはなぜ一致しないのか
登りの途中で読み上げられるペースは、驚くほど遅く聞こえることがあります。ところが帰ってから確認する平均ペースは、その瞬間が示していたほど悪くないことが多いものです。どちらの数字も嘘をついているわけではありません。同じ山行の、違う量の区間から計算された数字だからです。片方はいまこの瞬間の短い区間、もう片方はルート全体を足し合わせたもの。一瞬を切り取った数字と全体をまとめた数字が一致すると考えるほうが無理があります。
まず結論
今のペースは、直近の数秒間でどれだけ進んだかから計算される、そのつどの推定値です。平均ペースは、山行が終わったとき(あるいはある程度歩き終えたとき)に、総距離を総行動時間で割って出す数字です。片方は狭い窓、もう片方はすべてを足し合わせたもの。きつい区間がひとつあれば狭い窓は大きく揺れますが、山行全体から出た合計はそれほど動きません。
「今のペース」はどう計算されているか
GPS が教えてくれるのは位置であって速度ではありません。速度は、直近の位置を比べてそのあいだの時間で割ることで、あとから求めるものです。今のペースはまさにこれで、直近ほんの数秒の動きをそのまま率に変換しています。窓が狭いからこそ、いま起きていることをすぐ反映できる一方で、揺れも大きくなります。岩場の一歩、景色を見るための立ち止まり、狭いつづら折りでの数歩——どれも、ごくわずかなデータだけで作られた数字にすぐ表れてしまいます。ならすための材料が、その狭い窓の中にほかにないからです。
登りの途中で聞いた読み上げペースが、実際の歩きよりも悪く聞こえるのはこのためです。直近数秒がどうだったかをそのまま伝えているだけで、直前の一時間全体の形を伝えているわけではありません。
「平均ペース」はどう計算されているか
平均ペースは、山行のある一瞬ではなく、全体を見ています。総距離を総行動時間で割った数字です。速い区間も遅い区間も同じ合計の中に足し込まれるので、その場ではきつく感じた 2 分間の岩場も、2 時間の山行から出た数字の中では 2 分ぶんの重みしか持ちません。きつかった区間が消えるわけではなく、その数字が説明しているものの一部にすぎなくなるということです。
なぜ瞬間ごとに見ると一致しないのか
今のペースと平均ペースは、「いま、どれくらいの速さか」と「全体として、どれくらいの速さだったか」という別々の問いに、それぞれ正直に答えている数字です。同じものだと思うところから混乱が始まります。登りが続くあいだは今のペースが跳ね上がり、傾斜が緩めば落ち着きますが、平均のほうはその区間を山行全体に薄めて反映するので、ほとんど動きません。逆のことも起きます。長く続く平坦で楽な区間は、平均ペースを、途中で読み上げを聞いた記憶よりずっと速い数字へと静かに引っ張っていくことがあります。平坦な区間はわざわざ声で確認されることが少なく、確認するのはたいてい登りや立ち止まったときだからです。
どちらの数字も修正が必要なわけではありません。きつい登りで悪く見える今のペースも、その登りが感じたほど悪くない平均ペースも、それぞれ作られたとおりの仕事をしているだけです。
つまずきやすいところ
- 一番きつかった区間で聞いた読み上げペース一回だけで、山行全体を評価してしまう——その数字は直近数秒の話でしかなく、全体の話ではありません。
- 今のペースが悪ければ、山行が終わったときの平均ペースも同じくらい悪いはずだと思い込む——短くきつい区間が合計に与える影響は、その場で感じるほど大きくありません。
- 今のペースが平均ペースのように安定するはずだと期待する——狭い窓で作られているのはわざとなので、足元が変わるたびに動くのが正しい姿です。
- ある山行の今のペースと、別の山行の平均ペースを並べて比べる——別の問いに答えている数字なので、並べても大した意味は出てきません。
TrailCam の場合
TrailCam は距離とペースを歩きながら声で読み上げられるので、画面を確認しなくてもその場の様子がわかります。そして山行が終わったあとは、一時停止していた時間を除いた行動時間から出した、ルート全体の平均ペースを表示します。この 2 つはわざと別々の読み方をするように作られています——山行の途中で耳を傾けるための数字と、あとから全体を振り返るための数字です。TrailCam のダウンロードは無料です。
よくある質問
- 今のペースは平均ペースより精度が低いのですか?
- 精度が低いわけではなく、答えている問いが狭いだけです。今のペースは直近の短い区間を反映するのですぐ動きますが、平均ペースは山行全体を反映するので安定しています。どちらも、それぞれが測っているものについては正しい数字です。
- 読み上げで聞いたペースが、最後に表示された平均ペースよりずっと遅く聞こえたのはなぜですか?
- 途中の読み上げは、たいてい直近の短い区間を伝えています。そのときやっていたこと——登り、岩の多い道、景色を見るための足止め——がそのまま数字に出ます。最後の数字はその区間を山行全体に均して出しているので、きつい一区間が感じたほど数字を動かさないことがよくあります。
- 短い休憩は、今のペースと同じように平均ペースにも影響しますか?
- 平均ペースは行動時間から計算されるので、一時停止していた時間はそもそも計算に入りません。今のペースはもともと直近の動きしか見ていないので、休憩中は単に新しく報告できる動きがない、というだけのことです。
自分のルートを記録する
TrailCam は iPhone 用の GPS ルート記録アプリです。動画・写真・音声メモを撮ったその地点に紐づけて保存し、GPX 1.1 または CSV で書き出せます。ダウンロードは無料です。