GPS トラックの最高速度がありえない数字になるのはなぜか
距離や行動時間は、多少荒れた記録でもたいてい素直な数字に落ち着くのに、最高速度だけ時速六十キロを超える数字が出ることがある。舗装路から一歩も外れていない山行のはずなのに、だ。歩き方が速かったわけではない。変わったのは、同じデータのどの部分に問いを投げたかであり、最高速度という問い方だけが、悪い答えを受け止める余地をまったく持っていない。
まず結論
GPS トラックにはそもそも速度計が内蔵されているわけではない。速度の数字はすべて、記録された各点がもともと持っている位置とタイムスタンプという二つの情報から、あとで計算される。連続する二点間の距離を、その間の時間で割るだけだ。距離や行動時間は、この計算をルート全体にわたって足し合わせて作られるので、一区間がおかしくても長い合計の中のごく一部でしかない。最高速度は逆の作られ方をしている——何千回とある割り算のうち、いちばん大きい値をそのまま選んでいるだけだ。一点がわずかにずれて、隣の点との間隔が短ければ、その割り算はすぐに「ありえない」数字を返す。ほかの記録は何ひとつ間違っていなくても、これは起こる。
たった一回の割り算に逃げ場がない理由
一秒間隔で記録された連続する二点を思い浮かべてほしい。二点目が実際に二十メートル離れているなら、時速に換算しても無理のない歩く速さや走る速さに収まる。だが、地図上のよくあるスパイクを生むのと同じ、電波が一瞬乱れる出来事があって、二点目が二十メートルではなく四十メートル先に記録されたとしたら、距離はただ二倍になっただけなのに、それを割る時間は変わらず一秒のままだ。位置のわずかでありふれたずれが、速度という数字の上では大きくありえない値に膨れ上がる。ごく短い時間で割るという操作が、その上に乗っているものを拡大してしまうからだ。
距離の合計はこの拡大を受けない。何千もの、ほとんどが正確な点と点の間隔を足し合わせるので、一つだけ膨らんだ間隔があっても周りに薄められる。最高速度は最初からその「薄められる」過程を経ない仕組みになっている——ファイル全体の中でいちばん速かった、あるいはいちばん遅かった、その一瞬だけを取り出して見せるのが役目であり、それはまさに、迷い点がいちばん出やすい瞬間でもある。
その一点はどうやって生まれるのか
原因は、ほかの GPS の乱れと変わらない。たまたま、計算がいちばん厳しく効いてしまう瞬間に重なっただけだ。
- 近くの面での反射——停まっている車、濡れた岩肌、金属の屋根など——が直接届く電波よりわずかに遅れて届き、一つの測位だけを本来より遠くにずらしてしまう。
- 尾根や建物、あるいは自分の身体が向きを変えたことで衛星が一瞬隠れ、その一点だけ、受信機が使える衛星の範囲が狭くなる。
- 樹林帯の深いところや地下道、建物の間の狭い隙間などで空が完全に見えなくなったあと、測位が計算し直され、一瞬行き過ぎてから元の精度に戻っていく過程。
どれも、一点を数メートル余分にずらすだけで済む出来事だ。軌跡全体に薄めて配れば気づかれもしないその誤差が、連続する二点の間のわずか一、二秒で割られることで、徒歩や自転車では実際に出せないはずの速度になる。
どんな場面で起きやすいか
ありえない最高速度の多くは、受信機の空の見え方がもともと弱くなりやすい、限られた場面に集中している。記録を始めてから一分ほど、受信機がまだ安定した測位に落ち着く前の時間。樹林帯が深い区間やビルの間の狭い場所で、反射による乱れが起きやすいところ。そして一時停止から再開した直後、停止していたあいだの空の見え方が、実際に歩いていたときより悪かった場合。
この数字がほかの記録について語ること、語らないこと
ありえない最高速度は、ある一瞬についての話であって、その山行やライド全体の評価ではない。距離、行動時間、ペースはどれも軌跡全体を足し合わせて作られる合計なので、最高速度を狂わせたのと同じ迷い点があっても、これらの数字が動く量はごくわずかか、まったく動かないことが多い。最高速度は GPS トラックが出す数字の中でもっとも影響を受けやすい値だと考え、それ以外の記録は、その一つの数字が思わせるよりずっとしっかりしていると考えていい。
TrailCam ではどうなっているか
TrailCam は、記録したどのルートについても距離・行動時間・ペース・獲得標高の四つを表示する——ハイキングでもサイクリングでも、一瞬だけを取り出すのではなく、軌跡全体を足し合わせて作った合計だ。最高速度という数字は表示していない。ルートを GPX 1.1 または CSV として書き出す機能は、任意の TrailCam Pro に含まれる機能で、その書き出したファイルには、ほかのサービスが最高速度を計算するときに使うのと同じ点がそのまま入っている。だから、もし別のサービスでそのファイルから最高速度を計算すれば、ここまで説明してきたことがそのまま起こりうる。TrailCam のダウンロードは無料。
よくある質問
- ありえない最高速度が出るのは、GPS の記録が壊れているサインですか?
- いいえ。ほとんどの場合、何千とある測位のうちの一点が、ごく短い、ありふれた電波の乱れでわずかにずれただけです。軌跡全体や、距離・行動時間といった合計には、通常ほとんど影響しません。
- 最高速度が距離に比べて信用しにくいのはなぜですか?
- 距離は軌跡全体にある点と点の間隔をすべて足し合わせるので、一つ膨らんだ間隔があっても長い合計の中のごく一部にしかなりません。最高速度は逆に、点と点の間の割り算のうちいちばん大きかった一つだけを選んで見せる仕組みなので、一点のずれを薄める余地がありません。
- 本当に速く動いた瞬間でも、高い最高速度の数字は出ますか?
- はい。本気で駆け出した瞬間や自転車での速い下り、強い追い風なども、正直に高い最高速度を生むことがあります。数字だけを見てそのどちらかを判断することはできませんが、周りの記録と釣り合わない、極端で不自然に丸い数字が一瞬だけ現れている場合は、実際の頑張りよりも迷い点である可能性のほうが高いです。
自分のルートを記録する
TrailCam は iPhone 用の GPS ルート記録アプリです。動画・写真・音声メモを撮ったその地点に紐づけて保存し、GPX 1.1 または CSV で書き出せます。ダウンロードは無料です。