同じ登山道でも、歩く方向によって獲得標高が変わるのはなぜか
起点と終点が別の場所にある縦走路を片側から歩くと、逆側から歩いたときとはかなり違う獲得標高が出ることがあります。これは天気で気圧がずれたり GPS がノイズを拾ったりするのとは違って、測定のブレではなく、その道そのものが持っている性質です。歩く向きを逆にすれば、それまで登りだった区間はすべて下りになり、下りだった区間はすべて登りになるので、これだけで獲得標高と下降量が入れ替わります。さらに、両端の登山口の標高が違えば、途中のアップダウンを数える前から、片方の向きのほうが正味で多く登ることになります。
短く答えると
獲得標高は、ルート上の地点を順にたどりながら、標高が上がった区間だけを足し合わせてできる数字です。下降量は、標高が下がった区間を同じように足したものです。歩く向きを逆にすると、まったく同じ地点をまったく逆の順番でたどることになり、それぞれの区間の「上がった」「下がった」がそっくり入れ替わります。北向きに歩いたときの登りは、南向きに歩けば下りとして数えられ、その逆も同じです。だから片方向の獲得標高は、もう片方向の下降量とだいたい近い数字になります。足元の地形は何も変わっていないのに、「上」と「下」の意味だけが逆になったからです。
この入れ替わりが完全にきれいな形になるのは、道の起点と終点の標高が同じで、アップダウンだけがある場合に限られます。縦走路のように登山口同士に標高差があると、この二つの向きは単純な鏡写しではなくなります。その標高差が、片方の向きでは獲得標高に、もう片方の向きでは下降量に上乗せされるからです。
片方向の登りは、もう片方向では下りになる
道のある短い区間が、40 メートルの登りのあとに 25 メートルのくぼみへ下る、という形をしているとします。この順番で歩けば、40 メートルは獲得標高に、25 メートルは下降量に数えられます。反対側から同じ区間を歩くと、標高の変化そのものは同じでも、たどる順番が逆になります。先に 25 メートルの登りが来て獲得標高に数えられ、そのあとに 40 メートルの下りが来て下降量に数えられます。丘の形は何一つ変わっていません。変わったのはどちらの端から歩き始めたかだけで、それだけでこの区間について 15 メートル分の正味の差が、片方の欄からもう片方の欄へ移ってしまいます。
実際の登山道では、こうした入れ替わりが一度だけでなく、道中のくぼみや盛り上がりのたびに何十回、何百回と起きます。一つひとつは小さくても、アップダウンの多い道では、どちらの端から歩き始めたかによって、獲得標高の合計がはっきり違う数字になることがあります。しかも、これは登山口同士の標高差をまだ勘定に入れる前の話です。
両端の標高差
周回コースは必ず出発地点に戻ってくるので、どちら回りに歩いても正味の標高変化はゼロで、向きを逆にしても、上で説明したアップダウンの入れ替えが起きるだけです。縦走路はそうではありません。両端が別の場所にあり、たいていは標高も違うからです。標高 1,200 メートルの登山口と 1,800 メートルの登山口を結ぶ道があれば、その差は 600 メートルで、途中のアップダウンとは別に、この 600 メートルはどちら向きに歩いても数字のどこかに必ず現れます。
低いほうの登山口から高いほうへ歩けば、この 600 メートルは途中のアップダウン分に上乗せされて獲得標高に入ります。高いほうから低いほうへ歩けば、同じ 600 メートルは下降量のほうに上乗せされ、獲得標高は途中の小さな登り返し程度まで小さくなります。これは、トレイルヘッドの看板が示す獲得標高と GPS の記録した獲得標高が食い違う、あの正味の標高変化の考え方と根っこは同じです。ただしここでは、その差は「正味と累積の違い」ではなく「どちら向きに歩くか」から生まれています。
これはアプリ同士の食い違いとは別物
同じ方向に歩いた同じ山行の記録同士でも、ふつうの GPS や気圧センサーのノイズ、アプリごとのしきい値の違い、往復で毎回まったく同じ地点を通っているわけではないことなどから、数パーセントの食い違いが出ることがあります。歩く方向によって獲得標高が変わるのは、これとは別の話です。ノイズのない完璧な記録があったとしても起きる現象で、それは獲得標高と下降量が、二つの方向についてそもそも違う量だからであり、同じ一つの数字を二通りに見積もっているわけではないからです。縦走路について獲得標高をひとつだけ載せているガイドブックや看板は、暗黙のうちにどちらか一方の向きを説明しているのであって、逆向きに歩いたからといって単純に符号が反転するわけではありません。両方の登山口がどちらが高いかによって、逆向きの数字は大きくも小さくも、あるいはほぼ同じにもなり得ます。
TrailCam のところ
TrailCam は実際に歩いた向きのまま標高を GPS の軌跡の一部として記録し、その獲得標高を距離・行動時間・ペースと並べて表示し、山行をリプレイするときには地図の下に高度プロフィールとして描きます。同じ道を逆向きから記録した場合は、履歴の中で別々の山行として残り、どちらか片方の数字がもう片方を代弁することはありません。アプリ自体のダウンロードは無料です。
よくある質問
- 片道 500 メートルの獲得標高がある道なら、逆向きは下降量が 500 メートルになりますか?
- かなり近い数字にはなりますが、両端の登山口の標高がまったく同じでない限り、ぴったり同じにはなりません。片方が高ければ、その差の分だけ両方の向きの数字がずれます。
- 周回コースでも同じことが起きますか?
- 影響はずっと小さいです。周回コースは必ず出発地点に戻るので、どちら回りに歩いても正味の標高変化はゼロのままで、向きを変えても同じアップダウンの入れ替えが起きるだけで、片側だけに標高差が上乗せされることはありません。
- 獲得標高が多く出る向きのほうが、必ず歩くのがきつい向きですか?
- ひとつの目安にはなります。累積の登りが多いほうが体力的にきつくなりやすいのは確かですが、それがすべてではありません。傾斜のきつさや足場、登りが道のどこに偏っているかも歩きやすさに関係します。
自分のルートを記録する
TrailCam は iPhone 用の GPS ルート記録アプリです。動画・写真・音声メモを撮ったその地点に紐づけて保存し、GPX 1.1 または CSV で書き出せます。ダウンロードは無料です。