同じ山行なのに、アプリによってペースが違って出るのはなぜ?
ペースを直接測っているアプリはひとつもありません。どのアプリも、距離を時間で割るという同じやり方で出しているので、その2つの数字についてアプリがすでにどう考えているかが、そのままペースの数字に表れます。それ以上でも以下でもありません。距離がわずかに違う、あるいはどこを「動いていた」と数えるかが違う2つのアプリは、まったく同じ元データから出発しても、違うペースを返してきます。この食い違いは、たいてい第三の独立した原因ではありません。すでにある2つの食い違いが、その上に組み上げられた数字の中に、もう一度顔を出しているだけです。
結論
ペースは距離を行動時間で割った数字で、山行が終わったあとに計算されるものであり、センサーから直接読み取っているわけではありません。この計算そのものには、直接測定された要素がひとつもなく、材料になっている2つの数字自体が、ペースとは関係のない理由でアプリ間ですでに食い違っていることがあります。だから2つのアプリでペースが違って見えたときは、まずペースそのものを見るのをやめて、その下にある2つの数字を確認するのが正しい順番です。
ペースは測定値ではなく計算結果
GPX のトラックポイントが持っているのは座標と、たいてい標高、そして時刻だけです。ペースの項目はなく、行動時間の項目もありません。ファイルを開くたびに、アプリは生の点の並びから、そのアプリが使っている距離の計算方法と、動いていたか止まっていたかを判定する独自のルールを使って、この2つをゼロから出し直しています。つまりペースはアプリからアプリへ引き継がれる数字ではなく、開くたびに一から計算し直される数字であり、そもそも「唯一の正しい値」というもの自体が存在しません。
距離が食い違えば、ペースも同じ分だけ食い違う
同じ記録でも、2つのアプリの距離がぴったり一致することはあまりありません。距離自体が、一連の GPS の点から積み上げた合計であり、そのつなぎ方をどれだけ単純化したり滑らかにしたりするかがアプリごとに違うからです。一方のアプリで数パーセント長く出た距離は、ペースの分数の分子に直接乗っているので、ペースもだいたい同じ数パーセントだけ動きます。片方が 14.1 キロ、もう片方が 14.6 キロと出た山行では、行動時間が秒単位で完全に一致していたとしても、距離を短く出したほうのアプリのペースが、その分だけ速く表示されます。
行動時間が食い違うと、ペースのズレは距離以上に大きくなりやすい
行動時間は時計から読み取る事実ではなく、判断の結果です。山行のどの区間を「止まっていた」と数えるかを、アプリごとに決めています。あるアプリは GPS の速度を見張っていて、ある閾値を下回った区間を自動で差し引きます。別のアプリは自分で押した一時停止ボタンだけを信用します。あとからファイルを取り込むサービスは、記録アプリが出した行動時間を無視して、生の点データから自分の閾値で計算し直すこともあります。こうした判断は、ふつうの山行でも数分単位でずれることがあり、ペースは行動時間で「割る」数字なので、単体では小さく見える行動時間のズレでも、同じ大きさの距離のズレより大きくペースを動かすことがあります。2つのアプリのあいだで実際に起きているペースの食い違いは、距離よりもこちらが原因であることのほうが多いです。
丸め方と表示のしかたも、小さなズレを生む
距離も行動時間もほとんど一致していて、本来なら気にするほどのズレではないはずのときでも、画面に出るペースは違って見えることがあります。ペースはたいてい 1 キロや 1 マイルあたり数秒単位に丸めて表示され、すでにわずかに違う2つの数字から作った割り算をさらに丸めるので、元の差がごくわずかでも表示上の数字が一段ずれることがあります。キロとマイルを切り替えれば、そこにもう一段、換算のための丸めが入ります。これは距離や行動時間の本当の食い違いとは性質が違い、目盛りの刻みが少し違う2本の物差しで同じものを読んでいるようなものです。
この2つの原因は、たいてい打ち消し合わない
距離が少し長めに出て、行動時間も少し長めに出るアプリなら、割り算の分子と分母の両方が伸びて、ペースでは打ち消し合うのではと考えたくなります。しかし実際には、距離と行動時間はそれぞれ独立に、まったく別の問題向けに作られたルールで計算されています——一方は GPS のぶれを積み上げる話で、もう一方は停止を検出する話です。たまたま打ち消し合うこともあれば、同じ方向に重なってしまうこともあり、最終的なペースのズレだけを見ても、どちらが起きたのかは判別できません。実際に何が起きているかを知るには、距離と行動時間をそれぞれ別々に確認するしかありません。
つまずきやすいところ
- ペースが合わないのを見て、どちらかのアプリのペース計算そのものにバグがあると考えてしまう——ほとんどの場合、ペースの計算自体ではなく、その手前にある2つの数字が食い違っているだけ。
- 距離と行動時間がそれぞれ一致しているか確かめずに、2つのアプリのペースだけを比べてしまう——両方が一致しているのにペースだけ違うなら、たいていは丸めの問題。
- これを、ひとつのアプリの中でのリアルタイムのペースと平均ペースの違いと混同してしまう——あれはその瞬間の値と山行全体の集計値の違いであり、終わった同じ山行について2つの別のアプリが食い違う、という今回の話とは別の問題。
- 再度取り込んだ GPX ファイルに、元のアプリが計算したペースがそのまま引き継がれると思い込む——ファイルはペースの数字を保存していないので、取り込んだアプリは自分が計算し直した距離と行動時間から、あらためてペースを出している。
TrailCam の場合
TrailCam はキロ、マイルどちらでもペースを記録でき、その計算のもとになる距離と行動時間は同じ1回の記録から出てくるもので、別々のサービスで2度計算し直されることがありません。行動時間は GPS の速度から推測するのではなく、自分で押す一時停止ボタンから出しています。ルートは GPX 1.1 または CSV で書き出せます。CSV のサマリーには距離・行動時間・ペースがまとめて残るので、次にどのアプリでファイルを開いてもゼロから作り直されることなく、数字そのものが山行と一緒に持ち運ばれます。書き出しは任意の TrailCam Pro の機能で、アプリ自体のダウンロードは無料です。
よくある質問
- どちらのアプリのペースが正しいのですか?
- たいていはどちらがより正しいということはありません。ペースは距離を行動時間で割って出す数字で、その2つ自体がアプリごとに違う計算をしていることがあります。ペースの食い違いは、ほとんどの場合その2つのどちらか、あるいは両方から受け継がれたもので、それ自体が独立した誤りではありません。
- 距離も行動時間もほぼ一致しているのに、ペースだけ少し違うのはなぜですか?
- そこまで一致しているなら、残りのズレはたいてい丸めによるものです。ペースは 1 キロや 1 マイルあたり数秒単位に丸めて表示されるのが普通で、単位を換算するときにもう一段丸めが入るため、もとの数字がほぼ同じでも表示される最後の桁がずれることがあります。
- GPX に書き出せば、アプリが計算したペースも一緒に保存されますか?
- いいえ。GPX のトラックポイントが持つのは座標・標高・時刻で、ペースにも行動時間にも標準の項目はありません。あとでそのファイルを開くアプリは、その両方をゼロから計算し直し、ペースもそれに合わせて出し直します。
自分のルートを記録する
TrailCam は iPhone 用の GPS ルート記録アプリです。動画・写真・音声メモを撮ったその地点に紐づけて保存し、GPX 1.1 または CSV で書き出せます。ダウンロードは無料です。