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同じ山行なのに獲得標高がアプリごとに違って出るのはなぜか

アプリ間の距離のズレは、まだ似たような範囲に収まります。獲得標高のズレはもっと大きくなることがあります。あるアプリでは 300 m の登りとされた山行が、別のアプリでは 450 m。どちらの数字も単体で見て明らかにおかしいわけではありません。このズレが距離より大きいのには理由があります。高度はもともと位置情報ほどきれいに測れておらず、獲得標高はスマホが記録する数字の中でもっともブレの大きい読み取りを、細かく足し合わせて作った合計だからです。

結論から言うと

獲得標高は一度きりの測定値ではありません。高度の読み取りが一段上がるたびにその分を足していく、積み上げの合計です。そして高度そのものが、GPS 端末が出す数字の中でもっとも精度の低いもので、緯度・経度に比べてブレの幅がかなり大きいのです。同じ山行を記録した 2 つのアプリ、あるいは同じ記録を処理する 2 つのサービスは、出発点となる高度の読みが違い、どの程度の小さな上下を「本物の登り」として数えるかの判断も違い、結果としてどちらも理屈は通っているのに、かなり離れた合計にたどり着くことがあります。

高度は位置よりも粗く測られる仕組みになっている

GPS 受信機は、空に散らばった複数の衛星からの信号の届く時間差を比較して自分の位置を割り出します。この仕組みは、上下方向の高さより水平方向の位置を割り出すほうがずっと得意です。水平方向の測位に効く衛星は地平線の周りに広く散らばっているのに対し、高さの測位に効く衛星は真上寄りに偏っていて、同じ瞬間に使える数も少ないためです。結果として、スマホが出す生の GPS 高度は、じっと立ち止まっていても、水平位置よりずっと大きく上下にブレます。高度の変化を足し合わせて作る合計は、このブレをそのまま引き継いでしまいます。

2 種類のセンサー、2 種類の誤差

端末によっては GPS の高度だけに頼っているものもあれば、気圧センサーも併用しているものもあります。気圧センサーは衛星ではなく空気の圧力から高さを推定するもので、短い時間での高さの変化は GPS より滑らかに追える傾向があります。ただし気圧による高さは相対的な値で、基準となる出発時の標高が必要なうえ、数時間のあいだに天候が変わって同じ場所の気圧が変化すると、それを実際に登ったことと区別できません。まったく同じルートを同じ端末で記録しても、穏やかな日と、天気が移り変わっていく日とでは、この理由だけで獲得標高の合計が変わることがあります。

どこまでの上下を「登り」として数えるか

高度の読み取りが 1 系統にきれいにそろっていたとしても、まだ選ぶべきことが残っています。小さな上下のどこまでを合計に含めるかです。ならさずにすべての上昇分をそのまま足すと、1 m 上がって 50 cm 下がる、というようなセンサーの細かなノイズが何千回と積み重なり、実際に登った分をはるかに超えて数字が膨らみます。ノイズは合計の中でうまく打ち消し合ってはくれないからです。逆に強くならしすぎたり、ある程度大きな変化しか登りとして数えなかったりすると、起伏のある地形での本物の小さな登りまでノイズと一緒に切り捨てられてしまいます。アプリごとにこの落としどころが違い、どこか唯一の正解があるわけではなく、ノイズをどこまで許容し、本物の登りをどこまで失うリスクを取るかという選び方の違いです。

記録した高度をそもそも使わないサービスもある

端末が記録した高度をまったく使わないサービスもあります。そのかわり各点の緯度・経度をもとに、別に用意した地形データベースからその地点の標高を調べ直し、その値から獲得標高を計算します。この「標高補正」は、地形データベースが生のセンサーのようにブレないぶん、滑らかで再現性の高い合計を出す傾向があります。ただしそれはその座標の地面の形を表しているのであって、実際に歩いたときに端末が測った値ではないため、同じルートでも生の高度から出した合計とそれなりに違う数字になることがあります。

ほかにも数字を静かに動かす要因

  • 登り分だけを数える「獲得標高」なのか、最高点と最低点の差なのか——この 2 つは別の数字なのに、しばしば混同されます。
  • 地形データベースは提供元によって解像度が違うため、同じ座標で標高補正をかけても、サービスどうしで数字が合わないことがあります。生の GPS 合計と合わないだけではありません。
  • 高いビルが並ぶ場所や木の茂みの下で記録したルートは、普段からある上下方向のブレに輪をかけて GPS の高度が乱れます。
  • しばらく屋外で使っていなかった端末は、気圧センサーが古い基準点から計算を始めてしまい、その山行全体の高度がほぼ一定の分だけ上下にずれることがあります。

結局どうすればいいか

頑張って調べれば「本当の獲得標高」にたどり着ける、というものではありません。高度は関わる数字の中でもとからいちばんブレの大きい読み取りで、どのアプリもそれをどうならすか、場合によっては生の高度より地形データベースを信じるかどうかを、それぞれ理屈の通ったやり方で選んでいるだけだからです。友だちのアプリや登山口の看板とぴったり合わせようとするのは、そもそも自分と同じ測り方をしていない数字を追いかけているようなものです。意味があるのは、同じアプリで記録した自分の過去の山行と比べることです。地面のかたちは同じでなくても、数字の作り方だけは変わらないからです。

TrailCam はルートごとに距離・行動時間・ペースと合わせて獲得標高を記録し、山行をリプレイするとその下に高度プロフィールが表示されます。最後の合計だけでなく、実際にどこで登っていたのかを見ることができます。

よくある質問

どちらのアプリの獲得標高が「正しい」のですか?
たいていはどちらが正しいということはありません。高度はスマホが出す数字の中でもっともブレが大きく、どのアプリもそのノイズをどうならすか、地形データベースに置き換えるかを、それぞれ理屈の通った方法で選んでいます。違う数字になるのが普通の結果です。
なぜ獲得標高のズレは距離のズレより大きいのですか?
そもそも高度の読み取りが水平方向の位置よりブレが大きく、これは GPS の測位の仕組みそのものに起因します。高度の変化を積み上げて作る合計は、水平距離を積み上げて作る合計より、ズレが大きく積み重なりやすいのです。
気圧センサーがあれば解決しますか?
短い時間での滑らかさには効きますが、別の問題を持ち込みます。気圧による高さは空気の圧力を基準にしていて、山行の間に天候が変わればその圧力も変わります。GPS のブレを、天候による変化に置き換えているだけで、誤差そのものがなくなるわけではありません。

自分のルートを記録する

TrailCam は iPhone 用の GPS ルート記録アプリです。動画・写真・音声メモを撮ったその地点に紐づけて保存し、GPX 1.1 または CSV で書き出せます。ダウンロードは無料です。

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