TrailCam

ガイド

樹林帯で GPS の精度が落ちる理由

森に入ると、まっすぐ歩いたはずの軌跡が登山道の左右に数メートルずつ揺れ始める。これはスマートフォンやアプリの不具合ではない。衛星からの電波が樹冠を通り抜けるときに実際に起きていることで、一度理解しておけば山道でいちいち気にする必要がなくなる。

受信機が本当に必要としているもの

スマートフォンは複数の衛星から届く電波を同時に比較して自分の位置を割り出す。空の広い範囲に散らばった衛星をはっきり見えれば見えるほど、測位は締まる。尾根や海辺のように空が開けている場所が最良の条件で、多くの衛星が広く散らばり、それぞれの電波が最短経路で届く。GPS の精度に関する数字はどれも、これに近い条件を前提にしている。

樹林帯の樹冠は、受信機とその空のかなりの部分との間にそのまま入り込む。葉や枝は壁のように電波を完全に遮るわけではないが、弱め、本来進むはずだった方向とは違う方向へ散らす。雨上がりの濡れた葉は乾いた葉より影響が大きく、葉が茂った広葉樹の森は、同じ木でも冬の裸木や疎らな松林より電波を通しにくい。

記録された軌跡に現れること

電波は届くには届くが、本来より弱く、ときには幹や枝に一度反射してから届く——マルチパスと呼ばれる歪みだ。受信機は受け取った電波から位置を計算し続けるが、少しずれたデータをそのまま信じてしまう。地図上では、まっすぐで平坦な道でも軌跡が真の経路の左右数メートルをジグザグに揺れ、高度の読みも開けた場所より荒れる。垂直方向の位置は水平方向より、弱く反射した電波の影響を受けやすいからだ。

距離もまた、樹林の狭い区間ではやや長く出る傾向がある。軌跡の小さな横揺れひとつひとつが、まっすぐな経路にはないはずの長さを足していくからだ。樹林帯を長く歩く一日では、登山口の看板に書かれた距離と実際にずれた数字になることがあるが、何も壊れていない。

樹林帯と谷は、姿の違う同じ問題

狭い谷、岩壁、密集した街路も、別の理由で測位を悪化させる——電波の減衰ではなく、幾何学の問題だ。空の一部が岩や建物に物理的に塞がれるため、そもそも見える衛星の数が減り、残った衛星も開けたわずかな帯にかたまってしまう。ここでもマルチパスは起きる。反射する相手が枝ではなく岩や壁になるだけだ。

密な樹冠が谷の奥にかぶさっているような場所では、両方の効果が重なる。地形が空の一部を塞ぎ、通り抜けてくる電波の多くはすでに一度反射している。これはスマートフォンが遭遇するほぼ最悪の条件だが、それでも崩れるのは軌跡の細かい形であって、正しい道を歩けているかどうかを判断する能力ではない。

実際に効くこと、効かないこと

  • 樹林帯に入る前、登山口や開けた場所で測位を済ませておくと、受信機はそこを起点に補正を重ねられる。樹冠の下でいきなり測位を始めるより有利。
  • 画面をこまめに確認しても何も変わらない。精度は頭上の空がどれだけ見えているかだけで決まり、画面に何が表示されているかとは関係ない。
  • 樹冠の切れ目に少し寄って歩いても、そのわずかな距離だけ改善するにすぎず、記録全体には大きく効かない。
  • 濃い樹林帯で記録した距離を登山口の看板の数字と比べるのは、あまり公平な比較ではない。看板は地上で測った数字、軌跡は葉の下を通り抜けた衛星電波で測った数字で、そもそも少し違う問いに答えている。

いずれも、アプリが直しきれていない不具合ではない。同じ道を同じ天気で歩けば、どの記録アプリでも同じ種類の歪みが多かれ少なかれ現れる。制約はソフトウェアではなく、電波がスマートフォンに届くまでの物理そのものにあるからだ。TrailCam は樹林帯でも開けた尾根でも、バックグラウンドで記録を続け、あとから GPX 1.1 または CSV として書き出せる。ダウンロードは無料。

よくある質問

樹林帯では専用の GPS 機器よりスマートフォンのほうが精度が落ちますか?
根本的には変わらない。スマートフォンも専用の GPS 機器も同じ衛星を受信し、同じ樹冠の減衰とマルチパスの影響を受ける。樹林帯で機種ごとに感じる違いは、たいていアンテナの設計やチップセットの差であって、どちらかが物理の制約を免れているわけではない。
樹林帯中心の山行のあと、獲得標高が高めに出るのはなぜですか?
垂直方向の位置はもともと水平方向より精度が低く、樹冠で弱まり反射した電波はそれをさらに悪化させる。記録された高度が一歩ごとに細かく上下すると、そのノイズをフィルターしていないアプリは、平坦な道でもそれをすべて足し合わせて「登った」と数えてしまう。
濃い森の中では GPS はまったく使えなくなりますか?
いいえ。電源が切れるように使えなくなるのではなく、精度が落ちます。軌跡が少し揺れ、数字の精度が下がることは想定しておくべきですが、受信機はその間もずっと位置を出し続けます。

自分のルートを記録する

TrailCam は iPhone 用の GPS ルート記録アプリです。動画・写真・音声メモを撮ったその地点に紐づけて保存し、GPX 1.1 または CSV で書き出せます。ダウンロードは無料です。

App Store でダウンロード