VPN を使うとハイキング中の GPS 精度は落ちるのか
落ちない。理由は単純で、VPN と GPS の測位は同じ工程のどの部分も共有していないからだ。VPN がしているのは、スマートフォンが送受信するインターネット通信——Wi-Fi や携帯回線を通るデータ——を暗号化し、別のサーバー経由に振り分けること。一方 GPS の位置は、受信機のチップが上空の衛星から届く電波の到達タイミングを比較して単独で割り出すもので、この計算にインターネットはどこにも関わってこない。VPN をオンにしても、受信機と空のあいだに何かが割り込むわけではないので、遅くなったり狂ったりするものが最初から存在しない。
結論から
VPN が変えるのは、スマートフォンのインターネット通信がどう暗号化され、どこを経由するかだけだ。GPS の精度には影響しない。GPS の精度はそもそもインターネット通信によって決まっているものではなく、受信機のチップが衛星の電波から位置を割り出す過程で決まる。VPN はその過程のどこにも顔を出さない。VPN をオンにして記録したルートも、オフのまま記録したルートも、まったく同じに見えるはずだ。
たまたま同じスマートフォンに同居しているだけの、別の仕組み
VPN が働いているのはネットワークの層だ。本来ならスマートフォンからウェブサイトやサーバーへ直接向かうはずの通信を、いったん VPN のサーバー経由に振り分け、その途中を暗号化する。これはプライバシーのため、あるいはウェブサイトや通信事業者から接続についてどこまで見えるかを変えるために役立つ仕組みで、GPS とは何の関係もない。位置を割り出す衛星受信機は、その計算をインターネット越しにどこかへ送って代わりにやってもらっているわけではなく、視界に入っている衛星から届く電波のタイミングだけを使って、チップの中で完結させている。
いかにも関係しそうで、結局は GPS に届かない話
気になるのも無理はない。VPN は、インターネットの外側からスマートフォンがどう見えるかを実際に変えるからだ。接続の IP アドレスからおおまかな場所を推測するウェブサイトは、スマートフォン自身の場所ではなく VPN サーバーのある場所を見ることが多い。ただ、この IP アドレスをもとにしたおおざっぱな位置の推測は、GPS とはまったく別の仕組みで、使われているデータも用途もまるで違う。衛星受信機から位置を取ってくる記録アプリは、この IP ベースの推測にそもそも触れないので、それを隠したところで記録されているトラックには何一つ変わらない。
VPN が影響しうる場所——ただしトラックそのものではない
VPN がハイキングアプリと少しでも関わるとすれば、それはネットワーク側だけだ。ルートをクラウドへアップロードしたり、更新を確認したりする通信は、VPN があってもなくても、そのとき使えるインターネット接続の上を流れる。TrailCam のように、オンラインに戻ったタイミングでクラウドバックアップが行われる仕組みなら、VPN が有効なあいだはその通信が経由する一段になるだけだ。ほとんどの場合は気づかないし、VPN サーバーの場所によっては少し遅くなることもあるが、すでに記録し終えた GPS の点には触れていない。記録そのものはネットワーク接続を待たずに進み、それをあとからクラウドへ同期する部分だけがネットワークに左右される。
唯一の本当の例外——ただし VPN そのものの話ではない
VPN として売られているアプリの中には、ごく一部、ゲームや地域限定サービスの表示を変える目的で、他のアプリに伝える位置情報そのものを偽装する機能を別途組み込んでいるものがある。これは VPN の本来の性質ではなく、一部の VPN アプリがついでに足している別機能で、通信の暗号化ではなく iOS の開発者向けツールにある位置情報のシミュレーション機能を利用して実現されている。プライバシーのため、あるいは通信規制を避けるために使う普通の VPN は、こんなことはしない。GPS のノイズでは説明のつかない形で——一度も行ったことのない都市に一瞬で飛ぶような形で——記録された位置がおかしいと感じたら、疑うべきは VPN 接続そのものではなく、一部のアプリに組み込まれたこの位置偽装機能のほうだ。
つまずきやすいところ
- VPN がウェブページの読み込みを遅くするのと同じように GPS も遅らせたり乱したりすると思い込む——VPN が触れているのはインターネット通信だけで、GPS の測位はそもそもインターネットを経由しない。
- 記録精度を上げようとして山行の途中で VPN を切る——VPN は受信機と衛星のあいだに入ったことが一度もないので、切ったところで改善するものが何もない。
- クラウドへの同期に失敗したのを VPN のせいにする——クラウド同期は VPN が振り分けているネットワークを経由するので確かめる価値はあるが、すでにスマートフォンに保存されている GPS のトラック自体には影響しない。
- 普通のプライバシー目的の VPN と、一部の VPN アプリに付いている位置偽装機能を同じものと思い込む——両者は無関係で、実際にアプリへ伝える位置を変えるのは後者だけだ。
TrailCam の場合
TrailCam は GPS 受信機から直接ルートを記録していて、VPN が動いていてもいなくても同じように記録する。インターネット通信の経路が記録そのものを左右することはないからだ。クラウドバックアップと同期は、オンラインに戻ったときに使えるどんな接続の上でも行われ、VPN が挟まっていても、スマートフォンにすでに記録済みの点は何も変わらない。TrailCam はダウンロード無料。
よくある質問
- VPN を使うと記録した GPS トラックの精度が落ちますか?
- 落ちません。GPS の精度は受信機のチップが衛星の電波を読み取って決まるもので、インターネット通信はまったく関わりません。VPN が変えるのはインターネット通信の経路だけなので、影響を与えようがありません。
- 山行を記録する前に VPN を切っておく必要はありますか?
- ありません。VPN と GPS の記録のあいだに気をつけるべき関わりはないので、オンでもオフでも記録されるルートに違いは出ません。
- VPN のせいでルートがクラウドに同期されないことはありますか?
- 理屈のうえではあり得ます。クラウドバックアップは VPN が振り分けているのと同じネットワーク接続を経由するからです。ただし GPS のトラック自体には影響しません。バックアップがすぐに行われるかどうかにかかわらず、記録はスマートフォンに保存され続けます。
自分のルートを記録する
TrailCam は iPhone 用の GPS ルート記録アプリです。動画・写真・音声メモを撮ったその地点に紐づけて保存し、GPX 1.1 または CSV で書き出せます。ダウンロードは無料です。